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           櫟味ばなし・師走
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 もういくつ寝るとミレニアム・・・ 努力して少しでも期待できる
ようにしたいものです。20世紀を振り返りいろいろ日本の食文化を
反省しつつこれからの行方について考えるこの頃です。
おせちに欠かせない「棒だら」
 我が家では、毎年おせち料理のお煮しめに必ず棒だらを炊きます。
棒だらというのは、たらの内臓を除いてカチンカチンになるまで
天日干しにしたものです。それを1週間近く水を取り替えながら
さらして柔らかく戻し、最初は匂いを取るために番茶で煮て、
柔らかくなったら今度はだしと酒に砂糖、みりん、しょうゆで薄味に
つけ気長に煮詰めていきます。祖母は棒だらが旨く煮えるように
なれば一人前と棒だらを柔らかく煮あげる難しさを料理上手の
基準としていましたが、私の母も棒だらの煮上がりには随分気を
使っていたようです。棒だらの木目のような身の隙間にまでしっかり
煮汁がしみ込むように、煮始めにお餅を1個入れるのがコツですが、
味付けの最後の決めてになるのは、れんこんやごぼう、昆布巻き
といった他の煮しめの鍋の煮汁を棒だらの味付けに利用することです。
甘いもの辛いもの、少しずつ棒だらの鍋に加えて我が家の味をつくって
いくのです。おせち料理に棒だらを炊きながら、なぜこんなことをする
のかと改めて考えてみたのですが、やはり煮汁がもったいからですよね。
捨てるのがもったいないから使おうと。そして、使ってみたら、
そうすることによってより美味しくなることを発見したということでしょう。
無駄をしない料理こそ健康料理
 魚を煮た煮汁には、魚のおいしいエキスが出ていますから、
それでおからを煮たり野菜を炊く。沖縄の豚肉料理にしても骨付きの
豚肉を柔らく煮てから、その煮汁を使って野菜も煮る。瀬戸内の鯛麺、
新潟の車麩の煮物、きっと全国いたるところにそういった無駄のない
合理的な家庭料理があるでしょう。
 使えるものはむだなくすべて使いきるのが家庭料理の基本です。
自然のうちにエコロジーを実践していたのです。
 食品にしても欧州の肉料理であれば、ヒレやロースといった筋肉
だけでなく、内臓も尾っぽも舌も血も骨も活用しようという文化があります。
だからこそ牛1頭をまるごと食べることになり、栄養のバランスが
とれているのです。
 日本は海に囲まれた魚文化の国、魚料理は世界のどの国よりも発達して
います。丸ごと食べる小魚、魚の目玉もアラも内臓も美味しいことは良く
知っていますし、なれずしは魚の腹にご飯をつめて発酵させて保存食の
美味さえ楽しみます。捨てないで無駄なく美味しく食べることで私達の
栄養バランスも片寄らず健康でいられるのです。ようするに私達が健康で
いようとすれば、命そのものを食べる必要があるのです。魚なら命を
支えている骨も内臓も頭も全てです。 
 豆や卵などはそれだけで新しい命を生み、小さくとも命そのものを
食べることになるから、完全食品と呼ばれているのです。
私はまだ未知の力が含まれている"命のようなもの"を"ビタミンX"と
呼んでいます。飛び切り美味しい旬のもの・鮮度の良い素材の中にきっと
ビタミンXが存在するはずです。
『米、麦類、とうもろこしなどを含めた世界の穀物貿易量は年間で
約2億トンといわれるが、その5分の1以上を日本が世界中から買いあさる。
木材の貿易量や海老の水揚げ量のそれぞれ3分の1も日本が輸入する。
多くの一次産品がこんな形でわが国に入ってきて、この傾向はますます
増えるらしい。地球的な規模からみて、日本は世界の陸地面積のわずか
0・3%、人工でみると2%くらい。
・・・「金を払っているのだから悪くないではないか」という経済の
感覚だけで対処しては間違いで、これによって世界の環境の悪化に
大きく影響を及ぼしている。』農業新聞・視点10月
 今、日本では食料の3分の1が残飯として捨てられているという説が
あります。それが本当だとしたら、たいへんなことです。これでは
罰が当たらないはずがありません。
お料理の進歩も「もったいない」から
 また一方では、この合理的精神からあらゆる料理の発達を導きました。
 ヨーロッパではローストチキンの焼き汁をじゃがいものソテーに
しみ込ませ、ローストポークの受け皿にたまった焼き汁をトマトや
ズッキーニ、なすのグラタンにかけてパン粉をふりオリーブ油をかけて
焼き上げる。シンプルだけど料理の味につながりをもたせ、ローストした
肉の付け合わせには最高なのです。 フランス語では出し汁のことを
フォン(fond)と言いますが、これは鍋の底という意味です。もともとの
意味は、肉を焼いたあとにフライパンなどの底に残った焼き汁のこと。
その焼き汁を捨てずに、水とかワインとかバターを加えてソースを
つくったわけです。これを大量の作ろうとしたのが骨を焦がして焼いた
フォンドヴォーです。さらに煮詰めたドミグラスをあらゆるソースの
ベースにしたのです。
 中華料理では、いろいろな材料から出た美味しいだしを、再び材料に
からめて残さず食べ切るために片栗粉でとじてとろみをつけます。
全て無駄にしないできれいに食べてしまう中華料理の文化もここから
始まりました。いろんな物を混ぜこぜにする文化です。料理カメラマン
から効いた話です・・・料理雑誌の撮影では何種類ものお料理をつくっては
写真撮影し、すべての撮影を済ませた後、スタッフ全員が集まっての
いろいろ試食は楽しいものです。中華料理の有名シェフの撮影のあと、
十種類以上のお料理を前菜からメインディッシュ、さらにデザートまで
全て一つの鍋に入れて火を入れて碗に取り食べるのだそうです。結構
美味しいのだそうですけど、感覚の違いがよく分かります。香港には
紅茶とコーヒーのブレンドがあるのだそうですが、これもうなずけます。
この発想、パワーが中国料理の源でしょう。
 これにくらべて日本料理の発達の仕方は違っていました。
中華料理やフランス料理のような発達の仕方はなかったわけです。
なぜならば、日本の気候風土から生まれた自然の生命活動は欧米や中国に
くらべて圧倒的に豊かで植物の種類など0がひとつ多く、ひと桁違う
程です。日本の国有林は本土の80%をしめ、あの広い中国では20%
にも満たないのです。ゆえに日本では季節にある旬のものをひとつひとつ
食べていれば数限りない種類の料理ができ、風味や味わいの変化、
そのものの歯ごたえなどテクスチャーを楽しめたのです。何種類もの
包丁を使いわけ物を切る技術、器を取り合わせる楽しみといった美的な
方向に発展したのです。余談ですが、日本は溢れる自然の恵みに恩恵を
受けているのですがそれは当たり前の事で気がつきません。欧米は自然を
破壊すれば蘇ってこないことを身を持って知らされました。ゆえに自然は
人が守るべきものとして私達以上に神経質にさえなるのです。
    (来年2000年に続きます)


                          おいしいもの研究所
                           代表 土井善晴
                         e-mail doiyoshi@po.sphere.ne.jp
                     

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